【事例検討会】6月開催のレポート & 8月開催のトピックス
こんにちは、認知症疾患医療センター・研修企画担当の淵上です。
今般のコロナ禍で、当センターが実施するさまざまな研修事業、いずれもオンラインに移行しました。この事例検討会もZOOM開催となり半年以上が経ちましたが、慣れないオンライン運営のため‘裏’でバタバタすることも未だに多く…運営スタッフを務めていると、たとえパソコン画面越しでも、なかなか‘顔見せ’もままならない昨今。
そんな中、6月の事例検討会では久々に顔出し(?)して発表をさせていただきました。
まず初めに私が心理職(公認心理師・臨床心理士)として、普段の病院業務やチーム医療の中で行っていることを簡単にご紹介。次に認知症医療で用いられることの多い認知機能検査を中心に、心理検査についてレクチャーさせていただきました。そこでは私たち心理職のこだわり(職人技?)の一つとも言える、認知症スクリーニング検査の中で実施する『遅延再生課題』の使い分けの‘コツ’についても、ちょっとだけ披露いたしました。
そして初期集中支援事業から認知症外来に繋がった模擬事例を通して、実際に心理検査をどのように活用していくのか、お話させていただきました。本事例は生活状況や地域でのトラブル等から関係機関が見立てた認知症の進行度と、外来受診に繋がった際に行われた各種検査などから判断された認知症の状態や能力評価に、少なからぬ‘ギャップ’がありました。けれども、それは決してどちらが正しい/間違っている、ということではありません。
ご存知の通り、認知症は‘一度正常に獲得された認知機能が何らかの脳の器質的な要因によって持続的に低下した状態にあり、それによって日常生活や社会活動を営む上で明らかに障害をきたしている状態’と定義されています。この定義の、特に後半部分が本事例にも関わるポイントです。つまり認知症は、ご本人の能力と、ご本人を取り巻く日生活環境とが相互に関連しあって障害の度合いも変わってくる、いわば‘状態象’とも言えます。このケース、実は独居の方だったので、たとえ認知機能障害のレベルとしては軽度であっても、単身生活においては既に様々な問題が生じる状態(段階)だったのです。そのギャップが、くしくも前述の『遅延再生課題』に明確に出現していたケースでもありました。
そしてギャップも踏まえたアセスメントを、いかに私たち医療機関と地域の支援者との間で共有できるか、さらにそこから本人支援に繋げていくことができるか。そのような姿勢の大切さを、今回ご参加の皆さんと一緒にあらためて振り返ることが出来ました。
さて次回の事例検討会は、ひと月空いて8月2日(月)開催となります。次は当院の認知症疾患治療病棟(アネックス病棟)看護師・木村が発表を予定しております。そしてご参加の皆さんからの話題提供も随時募集しておりますので、ぜひお声かけください!
南多摩医療圏認知症疾患医療センター 平川病院
公認心理師・臨床心理士 淵上 奈緒子